MBA留学の意義: 「点をばらまく」こと
冬休みで時間があるということもあり、ここ最近「MBA留学の意義」についてぼんやりと考えていました。
ビジネススクールでの1年間、ないし2年間で得られるものは多義的であり、また個人によっても差があるため、「MBA留学の意義はこれです」とバシッと言い切ることは不可能だと思っています。
その上で、特に私のように職業専門家のキャリアを歩んできた人にとっては、私自身感じていることが参考になるかと思い、自分自身の整理も兼ねてエントリーにまとめてみようと思います。
一言でいえば、「点をばらまく」ことです。
「Connecting the dots」と、点をばらまくこと
「Connecting the dots」という言葉はどこかで聞いたことがあるかもしれません。
Steve JobsのStanford大学でのスピーチが有名ですので、そちらでご存知の方も多いと思います。
過去の経験や知識が、将来思いもよらない形で繋がり、自分を助けてくれる。点と点は将来を見据えて繋げることはできず、あとで振り返ってみたときはじめてつながりが分かる。
私はこの考え方が大好きで、常に「この経験はいつか将来役に立つかも」「何事も無駄なものはない」と考えて色々なことに積極的に挑戦してきました。
点と点を繋ごうにも、そもそもの点がなければ繋ぎようがありません。また、繋ぐ点と点とに広がりがなければ、その繋がりにインパクトはありません。その意味で、点を「ばらまく」と自分では表現しています。
職業専門家と、点をばらまくこと
私は元々法曹を志して法学部に入学しましたが、紆余曲折あって日本の公認会計士資格を取り、大学卒業後は監査法人で働き始めました。それからは会計監査一筋のキャリアです。途中幸運なことに事業部異動があり、関わるクライアントがガラッと変わったことがあったのですが、ベースとしているのは常に「会計監査」です。
監査の仕事は好きだったので、それ自体には全く不満はありませんでした。しかしながら、私の頭の中には常に「Connecting the dots」がありました。
職業専門家として働く以上仕方ないことかもしれません。専門家として究極必要なことは、深く、尖った知識と経験です。一方で、前述したConnecting the dotsの観点からは、自分の経験、知識に十分な広がりがなくなってきており、点と点を繋げるにも、狭い範囲でのつながりでインパクトが小さくなっていることに気づいたのです。
プロジェクト変更・転籍・転職。会計士のキャリアをベースとして、出来そうなことは色々ありました。その中で、「今いるところから一番遠くに点をばらまくには」どうすればいいか考え、住む場所、行動様式、付き合う人、すべてをガラッと変えることだという結論に至りました。
私にとってそれはMBA留学だったのです。
MBA留学と、点をばらまくこと
Chicago Boothに来て、「点をばらまく」ことに関しては本当に素晴らしい経験が出来ていると感じます。
会計士として監査法人で働く上で触れることのなかった知識、例えばマーケティング、行動心理学、ストラテジーといった分野について、MBAというカリキュラムを通じて幅広く触れることが出来ています。
一緒に学んでいる在校生は幅広いバックグラウンド、国籍を持っています。周りで一緒に働くメンバーのほとんどが日本人の会計士だった監査法人時代とは、ネットワークの広がりが全く違います。
アメリカ・シカゴでの生活、クラブ活動、インターン、そのどれもが、監査法人時代に得ることが難しかった経験です。
滅茶苦茶面白かったTechnology Strategyのクラス。
憧れのHarry Davis教授の前で、プロジェクトの進捗を報告した5分間のプレゼンテーション。
ミシガン湖沿いをランニングしながら、サンフランシスコ出身の同級生と将来のキャリアについて話した土曜日の朝。
どの点が将来どんな形で繋がるのかは、(Steve Jobsも言っていたように)今は分かりません。将来何らかの形で繋がることを信じて、あと約半年のMBA期間、出来る限りの点をばらまいてみようと思っています。